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2018/19シーズン〜〜監督:ウナイ・エメリ〜〜 [Arsenal F.C.]

2018/19シーズン〜〜ウナイ・エメリ〜〜

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約22年間アーセナルを指揮してきたボスが退任し
新たにエメリ監督を迎えた最初のシーズンでしたが
PLではシーズン終盤の重要な時期に失速してしまい
トップ4争いに敗れ、
その上、来シーズンのCL出場権を賭けた
最後のチャンスだったEL決勝では
良い所なくチェルシーに敗れてしまい
3シーズン連続CL出場権を逃す
残念なシーズンに終わってしまいました。


そのエメリ監督を新たに迎えた事で
これまでのアーセナルとはいくつかの変化が生まれました。

まずチームスタイルは基本的には自らボールを支配する
ポゼッションスタイルを基本としている所は
大きく変わった訳ではありませんが
そこからゴールを陥れるまでの道筋は変わったと思います。

以前からよく言われる様にエメリ監督のスタイルは
サイドに起点を置いてサイドから崩すと言う形が
代表的なスタイルだと思います。

サイドアタッカーとSBが連動して
サイドの裏やハーフスペースの深い位置に侵入した所からの
折り返しをゴールに繋げる形を得意とし
特にその深い位置まで侵入した所から送られる
マイナス方向の折り返しを
走り込んでくるアタッカーが
ペナルティスポット付近で合わせる形は
アーセナルでも早い時期から導入され
一定の効果を挙げたと思います。

このサイドからの仕掛けが代表される様に
ボスの時代の様な即興的な仕掛けが減り、
予め決められた仕掛けの形で
相手を崩すパターンが多くなった所も
大きな変化だと思います。

この様な予め決められたサイドからの仕掛けの形は
シーズン前半は多くのゴールを生み出していましたが
その一方でシーズンが進むにつれて
対戦相手に研究された事もあり
徐々に決まらなくなったのも事実であり
その様な状況の時に例えばシティの仕掛けの様な
更にその先を1歩も2歩も行く様な
仕掛けの形が出てくれば良かったと思いますが
そこまでの引き出しの多さは
現在のアーセナルには芽生えていないと言うのが現状であり
前回書いた様にその辺りがシーズン通しての
シュートチャンスの少なさにも影響している様に感じます。

とは言え、ボスの時代の様に仕掛けの多くの部分を
個々の選手のアイデアや閃きに任せていた時の様に
相手の守備のブロックを前にして
完全に行き詰まってしまう様な場面は
減っては来ているとは思います。
勿論、時には選手個々のアイデアと閃きは必要だと思いますが
その前のベースとなる部分に
予め決められた形と規律を持ち込んだ事で
アーセナルの攻撃陣は上方修正されたと思います。

そして選手交代に関しても
ボスの時代とは大きな変化が観られました。

ボスの時代では基本的に75分過ぎから
5分間隔で選手を投入するパターンが
決まり事の様に圧倒的に多く
流れを変える様な意外性という部分が乏しかったと思います。

一方のエメリ監督は例えば前半チームが機能していなければ
後半頭から選手を入れ替えて
積極的に流れを変えようと試みます。
しかも2枚同時に代える様な場面も何度もあり
実際その交代により試合の流れを変えた試合が何度もありました。

今シーズンのエメリ監督が行って来た選手交代を観ていますと
例えばボスの場合はその時のベストメンバーで先発を組み
そのベストメンバーで行ける所まで押し切る傾向が強い一方で
エメリ監督はチームが上手く機能しなかった場合を想定して
例えその選手が好調であったとしても
その流れを変える為の切り札として
ベンチに置いておくタイプの監督の様に感じます。

よってエメリ監督の戦前のプランの中には
試合の流れによりどの選手を投入するか等の
選手交代も含めてプランされている様に感じ、
何よりも勝負所を逃さない決断力はボスよりもある様に感じます。

一方で昨シーズンも問題だった守備組織の再建に関しては
エメリ監督になってからも求められた結果を導き出す事は
出来ませんでした。

ボスの時代とは異なり対戦相手の布陣やスタイルにより
試合毎に4バックと3バックを使い分ける形は
これまでのアーセナルにはない形でしたが
逆の言い方をすればどの様な相手を前にしても
しっかりと守る事が出来る
完成された守備組織を持っていないと言う事でもあり
その完成された守備組織がない分、
相手の長所を消す様にシステムを変更する事で
対応していたとも言えます。

勿論、シーズン序盤のDFラインを支えてきた
16ホールディングの長期離脱や
主力としてDFラインを支えなければならなかった
20ムスタフィの低迷等のマイナス要素が多かった為に
プラン通りにいかなかったのかもしれませんが
印象としてはエメリ監督に守備組織を再構築する事を期待するよりも
絶対的なタレントを補強する事で守備組織を安定させる道を選んだ方が
早道の様に感じてしまいます。

それ以外で目に付く所は
試合中の振る舞いだと思います。
試合中はあまり動かなかったボスに対して
エメリ監督は殆どの時間ピッチサイドに立ち
常に選手たちに指示を出し続ける姿は新鮮であり
それと共にスタジアムと連動する様に
喜怒哀楽を示す所も観ているグナとしては
一緒に戦っている感じがして良かった様に感じます。

その一方でパリSG時代にも問題になりましたが
スター選手を操る手腕に関しては少し疑問に感じる所はありました。

パリSG時代では「PK事件」を代表する様に
ネイマールのエゴを抑える事が出来ずに
いわゆるスター選手を含めたチームを完全に掌握する事が
最後まで出来なかったと言われていました。

一方でアーセナルには元々エゴを振りかざす様な選手は
基本的にはいませんので
パリSG時代の様な問題は起こらないと思われていましたが
それでも年末年始頃の10エジルの扱いに関しては
外から見ていて上手く出来ていない印象を抱かざる得ませんでした。
勿論、エメリ監督が求めるスタイルやプレーに対して
10エジルが100%応える事は出来ていなかった為に
外すと言う考えは全てが間違いではないと思いますが
それにより10エジルの眠っていた力が呼び覚まされたかと言えば
実際はそうではなかった様に感じます。

これまでの10エジルのキャリアやコメントから明らかなのは
10エジルがチームの為に全力で戦うのは
その信頼に応える為だと言う事です。
確かに問題を指摘して課題を与える事も
選手を成長させる上で重要だと思いますが
10エジルに対してはチームから外す事で
反骨精神を刺激するよりも
それでもなお信用して起用し続ける事で
その信頼に応えようとする気持ちを利用した方が
もっとスムーズに問題点に対して取り組んだ様に感じます。

そう言う意味では人心掌握術は
それ程高い方ではないのかもしれません。

一方で公然と選手を批判する事を決してしない所は
非常に好感が持てます。
これはボスにも通じる所だと思いますが
某リーニョの様に
自分の選手を公然と批判する様な監督もいますが
アーセナルと言うクラブの伝統としては
クラブと言うファミリーを
リスペクトする事が出来る監督がやはり相応しく
その様な監督がボスの後任として就てくれた事は
正直良かったと思っています。

その一方でモチベーターとしては
やや疑問に感じる部分もあります。
特にシーズン終盤に失速して時には
チーム全体に覇気が失われていた様に見え
それを改善する様な+αをチームに与える事が出来ずに
その悪い流れにそのまま飲み込まれてしまったのは
非常に残念でした。

ボス同様にジェントルマンなのは
非常に好感が持てますが
その一方でクロップの様になるのは無理であっても
時にはチームに喝を入れる様な
熱い所をもう少し観せても良い様に感じます。

そしてそのジェントルマンの部分が出ているのかもしれませんが
ちょっと優しすぎると言いますか
正直すぎると言いますか
特にフロントに対してもう少し
「我」を通しても良い様に感じる所はあります。

そう感じた所は冬の移籍期間での補強に関する所です。

冬の補強期間に入る前の段階で
ウイングタイプの選手等の補強の必要性を
エメリ監督は会見で訴えていましたが、
その後の会見で、補強資金が全くなく
希望する選手の獲得は出来ないだろうと
打ち明けてしまっていました。

勿論、2シーズン連続CL出場権を逃し
財政的にはそれ程余裕がないのは分かりますが
冬の移籍期間での補強の必要性を訴えた会見の時点では
補強資金が全くないと言う事を
現場を任されているエメリ監督に知らされていなかったと言うのは
非常におかしな状況であり
しかもエメリ監督にしてみれば
自らに課せられた使命はCL出場権の奪還であり
その目標を達成する為のサポート体制に
疑問を感じてもおかしくない状況だったと思います。

まぁ、その様な状況を素直に受け入れてしまう所が
エメリ監督が優しい所と言いますか
寛容な所だと思いますが
実際はどうかは分かりませんが
もっと強く反発しても良い様に感じます。

それと共に、会見の場で冬の補強資金が全くない事を
発表してしまうのは
ちょっと正直すぎるとは思いますが、、、。
まぁ、嘘を付けない正直な人間性は
個人的には非常に好感が持てますが、、、(苦笑)。

そして今シーズンのエメリ監督が成し遂げた功績の中で
忘れてはならない所が
ボスの時代ではその才能を開花する事が出来なかった選手達が
今シーズンレベルアップした所かもしれません。

17イウォビや16ホールディングや15ナイルズは
今が一番伸びる年齢ですので
その時期に信頼して積極的に起用した所は勿論ですが
34ジャカや31コラシナツの様に
期待されて入団しながらもその期待に応えられていなかったタレントが
しっかりとその持てるの能力を発揮し始めた所は
エメリ監督の効果だったと思います。

以前に某雑誌のコラムで
アルゼンチンの名将、ルイス・セサル・メノッティの
「インテリジェンスに富んだ選手は、
自由を与えられた中でも物ごとを整理しながらプレー出来るが
そうでない選手は規律を必要とするものだ。」
と言う言葉が紹介されていましたが
この言葉でボスの時代では輝けなかった選手が
エメリ監督になってから輝ける様になった理由が
何となくわかった様な気がしました。

「インビンシブルズ」時代のアーセナルはまさに
インテリジェンスも兼ね備えていた
優れたタレントの宝庫でしたので
ボスの自由を与える戦術でも
その中にしっかりとした規律が成立し
チームとして機能していたかもしれませんが
時が進みボスの時代の終わりの頃のチームの中には
その様なタレントが減ってきてしまったのか
ボスの自由を与える戦術の中に規律が成立しなくなり
結果としてその戦術では
チームが機能しなくなってしまいました。

その様な視点で考えますと
ボスの時代ではその実力を発揮出来ずにいた
34ジャカや31コラシナツ等は
「そうでない選手」だったのかも知れません。
自由を与えるボスの下では規律的なプレーが出来ずに
その実力を発揮出来なかった一方で
エメリ監督に代わってからしっかりと規律を与えられた事で
その規律に沿う事で
自らの実力を発揮出来る様になったと考えれば
非常に腑に落ちます。

どちらが良いか悪いかと言う問題ではないと思いますが
現実的にインビンシブルズ時代の様なタレントが
もう揃う事がない事を考えますと
しっかりとチームに規律を与えるタイプの指揮官の方が
適しているのかも知れません。


今シーズンはフロント陣のトップも入れ代わり
クロエンケ氏が単独オーナーに就任する等、
バタバタとしてもおかしくないシーズンだったと思いますが
そう言う意味ではそのバタバタを現場に持ち込まずに
上手く乗り切ったのはエメリ監督の手腕だと思います。
その一方で実質的な今シーズンの目標だった
来シーズンのCL出場権の奪還が
あと一歩の所まで迫りながらも
詰めの甘さを露呈して取り逃がしてしまったのは
残念でした。

来シーズンはエメリ監督にとっては
自らの去就を賭けたシーズンになると思います。

このまま来シーズンもトップ4入りを逃し
CL出場権を奪還する事が出来なければ
更迭される可能性も十分にあると思います。
しかもここ最近の流れを考えますと
現在のチームを解体して
新たなチームをしかも若い選手を多く取り込んで
作り直そうとしている雰囲気があり、
その上、どれ程の補強が成されるのかも分からない状況で
このミッションを達成するのは
非常に難しいかもしれません。

それでもアーセナルというクラブを
今後もビッグクラブと言う枠組みの中に保ち続ける為には
まずはCL出場権を獲得するしかありません。

その様に難しいシーズンになると思いますが
来シーズンは自らの進退を賭けてでも
今シーズン以上の結果を目指して欲しいと思います。


C'mon Arsenal !!


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